残憶記

どう過ごしたか記憶が残らない日々を過ごしているわたしが、何かをしていたことを少しでも記録するブログ。

小川一水『天冥の標Ⅹ 青葉よ、豊かなれ』

  小川一水『天冥の標Ⅹ 青葉よ、豊かなれ』(ハヤカワ文庫、2018年12~2月)を読み終えました。

 part3が出てから一気に読みました。Ⅸまで育ててきた芽を収穫し、さらにⅩだけで全銀河的な広がりを見せたストーリーを見事に収束させて、大団円となりました。今まで約8年素晴らしいシリーズと共に時間を過ごしてこれた、よい長編と出会えてよかったなと、熱い感動が溢れてきました。

 思えば私がイメージする地球外生命体は体格の個体差はあるものの、種としての精神の統率が強く、個体ごとの精神的な多様さはあまりない生命をイメージしておりました。本作でも本星のカンミアはそのような印象が強いですが、それに比べ人類はとても多様で、また地球は多様な種の共存で成り立つのだなと、当たり前のことに改めて思い至ることとなりました。

 私がSFを読み始めた時期に手に取ったのが、この天冥の標シリーズ。どの巻でも、絶望を抱える登場人物たちが前に先に進もうと、もがくストーリーが続きました。読んでいる自分自身が社会人となり、日々つらいと感じながら生活している中、イサリやカドム、アイネイアの勇気を見て、自分もがんばるかと励まされていたなと思います。すべてが完結した今、改めて最初に読んだ時の気持ちを思い出しながら、読み直そうと思います。小川さん、ありがとうございました。